睡眠部屋

超不定期日記です

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

『君と僕の寂しい生活』×0(後)

「すまん、無理に言わなくても」
 途中まで言ったところで、ぼそぼそと囁くような声が聞こえてきた。
「ん、何だ?」
 聞き返すと、彼女は睨みつけてくる。ポニーテールの髪型は個人的に良いと思うのだが、
鋭い目が全てを帳消しにしている。瞳の奥では憤怒の炎が揺らめいていて、本能的に一歩
後退してしまった。不味い、と脳が叫んでいる。もしかしたら先程何やら言っていたのも
呪いの類ではないだろうか。僕は幽霊と同様に呪いなども信じてなどいなかったが、本物
を見てしまった現在では何でもありだ。どんなことを言われても、今ならば何でも信じて
しまいそうになるだろう。未知との遭遇は、それだけで人生を変えてしまう。
 だが、彼女の出したものは予想外のものだった。
 彼女は大きく息を吸う動作をすると、
「名前が思い出せんのだ!!」
 耳元で叫ばれた。
「部屋からはろくに出られんし、手掛りも見付けられない。覚えているのは、名前が必要
だということくらいだ。それが無いと成仏も出来んらしくてな、だから貴様が邪魔なんだ」
 開き直ったらしい彼女が言うには、つまりは弩忘れの結果自縛霊になってしまったたと
いうことらしい。何て迂濶なんだろう。いや、幽霊の世界の仕組みなど知らなが、もしか
したらこれが普通なのかもしれない。だとしたら、随分と迷惑な制度もあったものだ。
 しかし、問題が分かれば話は早い。
「手伝おうか?」
 言い放ったきり黙り込んでいた彼女が、こちらを向いた。

「こっちも折角見付けた安いアパートだし、出ていきたくない。そっちは早く成仏したい。
だから僕が手伝うのは、悪い話じゃないと思う。どうだろう?」
 数秒。
「ここまで強引な馬鹿は初めてだ。もう知らん、勝手にしろ」
 どうやら許可が出たらしいので、漸く部屋に入る。幽霊との共同生活なんて、自分でも
馬鹿な話だと思う。こんなものは漫画や小説の中にしか無いと思っていたが、まさか一番
信じていなかった自分が体験することになるとは思わなかった。
 共同生活、という言葉で思い至る。
「名前、何にすれば良い?」
 答えは返ってこない。
 名前で呼ぼうにも肝心のそれは分からないし、妙なあだ名を付けても困るだろう。幽霊
などという呼び方も、なんとなく差別的で気が引けてしまう。それに、本人は幽霊である
ことを気にしているかもしれない。どう呼べば良いのだろうか。
「君」
 結論して出てきたのは、シンプルな言葉だった。
 だが、良いかもしれない。
 下手に名前を与えるよりも、こう呼ぶのがしっくり来る。名前で呼ぶのは、彼女の本当
の名前を見付けた後で良い。それまでは『君』と呼ぶことにしよう。
「それで良いかな?」
「好きにしろ」
 今度も答えが返ってこないと思っていたが、つまらなそうな声が聞こえてきた。
「そう言えば、僕の名前は」
「要らん」
 どうやら、かなり嫌われたらしい。
スポンサーサイト
  1. 2007/01/13(土) 15:09:20|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<酷い風邪を引いてしまいました | ホーム | 『君と僕の寂しい生活』×0(前)>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://87830000.blog89.fc2.com/tb.php/3-f649b7bf
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。